「タンス遺言」はもう古い!?自筆証書遺言書保管制度の5つのポイント

ご自身で書いた遺言書、いわゆる「自筆証書遺言」は、紛失や改ざん、相続人に発見されないといった
リスクに加え、書式の不備によって遺言そのものが無効になってしまうという、危険性が常に伴います。
こうした課題を解決するために、「自筆証書遺言書保管制度」ができました。この制度を利用することで、あなたの最後の想いを、より安全・確実に家族へ届けられるようになりました。

今回は、この便利で新しい制度について、意外と知られていない、しかし知っておくと非常に役立つ
「5つのポイント」を解説します。

1.家庭裁判所の「検認」が不要

この制度の恩恵のひとつは、「検認」が不要になる点です。
通常、自宅などで保管された自筆証書遺言書は、家庭裁判所で検認という手続きをしなければ
なりません。
これには、相続人全員の戸籍謄本などを収集し、裁判所に申し立て、指定された期日に出頭します。
完了まで数ヶ月を要することもあります。その間、相続手続きは進められません。

しかし、自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書は、この検認が免除されます。
これは、大切な家族を亡くした悲しみの中での、煩雑な法的手続きから解放してくれます。

2.手数料は3,900円

「費用が高いのでは?」と思われがちですが、この制度の手数料は良心的です。
申請手数料は、遺言書1通につき、3,900円です。
財産の価額によって手数料が変動する公正証書遺言とは違い一律です。

3.厳格な書式ルール

手軽に作成できるのが自筆証書遺言の良さですが、書式ルールを遵守する必要があります。
民法(明治29年法律第89号)第968条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書に限られます。

民法上の要件以外には

  • 用紙: A4サイズ
  • 模様等:記載した文字が読みづらくなるような模様や彩色がないもの
  • 記載面: 片面のみに記載し、両面印刷は不可
  • 余白設定: 上部5mm以上、下部10mm以上、左側20mm以上、右側5mm以上の余白を確保
  • ページ番号記載: 全てのページに番号を余白内に記載
  • 製本しない: 複数ページでも、ホチキス止めや糊付けはしない

等のルールがあります。
消えにくい筆記用具の使用や戸籍どおりの氏名で記載するなどの留意点もあります。

4.財産目録は手書き不要

遺言書に添付する「財産目録」については、自筆でなくてかまいません。
不動産の登記事項証明書や銀行の通帳のコピーを、財産目録として添付することも可能です。

ただし、どのページにも必ず遺言者本人の署名と押印が必要です。

5.手続きは予約制

この制度の利用は「完全予約制」です。
自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官の外形的なチェックを受けるためです。

予約は、法務局のウェブサイトから24時間いつでもオンラインで行えるほか、
電話や法務局の窓口でも直接申し込むことが可能です。
ただし、電話と窓口での予約受付は平日の午前9時から午後5時までとなっているため注意が必要です。

まとめ

法務局の「自筆証書遺言書保管制度」は、従来の「自筆証書遺言」が抱えていた紛失・無効・未発見
といったリスクを解消し、低コストで安心を提供する仕組みです。

法務局で保管されるので紛失・改ざんのおそれがない、
法務局で遺言書の方式不備も確認してもらえる、
法務局から、相続開始後、遺言書が保管されている旨を相続人等に通知もしてもらえる
という大きなメリットがあります。

大切な家族のために、あなたの最後の想いを確実な形で残す準備、始めてみませんか?
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【参考文献】
法務省:自筆証書遺言書保管制度
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html